「譲位」は当然? 海外王室で近年行われた譲位の実例
2017年1月6日発売『象徴天皇「高齢譲位」の真相』より、海外王室の実例を紹介
ヨーロッパで相次ぐ譲位、ブータンは定年制
天皇の「生前退位」問題とは対象的に、海外では、ここ数年、国王などによる「生前退位」の表明が相次いでいます。
3年前の2013年には、1月、日本の皇室とも親交の深い、オランダのベアトリクス女王が、王位を皇太子に引き継ぐと発表し、続く2月には、ローマ法王のベネディクト十六世が、高齢による体力の低下を理由に、ローマ法王としておよそ600年ぶりとされる「生前退位」を表明して、世界の注目を集めました。
さらに、この年の7月、同じく皇室と親交の深いベルギーの国王アルベール二世が、高齢などを理由に、皇太子に王位を譲ると表明しました。また、おととし(2014年)にも、スペインの国王ファン・カルロス一世が、皇太子に王位を譲っています。
このようにヨーロッパでは、近年「生前退位」(譲位)が相次いで行われています。もう少し説明を加えますと、まずオランダ王国では、ウィルヘルミナ女王(68歳で退位・1948年)から長女のユリアナ女王(71歳で退位・1980年)を経て即位した長女のベアトリックス女王が、33年後の2013年1月、「次代に託する」ため、退位を表明し、4月に75歳のお誕生日を迎えて、長男のアレクサンダー皇太子(46歳)に譲位しています。
つぎにベルギー王国では、ボードゥアン一世(在位1930〜1993)の崩御により即位した弟のアルベール二世(在位1993〜2013)が、2013年7月、79歳という高齢と健康を理由にあげ、長男のフィリップ皇太子(53歳)に譲位しています。
さらにスペイン王国では、1975年フランコ総統によって国王に指名されたファン・カルロス一世が、2014年6月、76歳で健康不安などを理由にあげ、長男のフェリペ六世(46歳)に譲位しています。
なお、バチカン帝国のローマ法王は、血縁による世襲ではありませんが、世界各地の枢機卿により選ばれ、終身在位を慣例としてきました。それが、2013年2月、ベネディクト十六世(85歳)は、体力の減退を理由にあげて退位し、代わって選ばれたフランシスコ(76歳)が就任しています。
一方、アジアの近例をみますと、カンボジア王国では、憲法で終身在位制を定めていましたが、2004年、シアヌーク国王(82歳)が退位を表明したので、それを認める法律を国会で可決し、息子のシハモニ国王(61歳)が即位しています。
それより注目されるのがブータン王国です。1972年に父王の急逝を承けて16歳で即位したワンチュク四世が、2005年、立法君主制への移行と「国王の65歳定年制」を表明するのみならず、翌年それを自ら繰り上げて、51歳で長男のシグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク(26歳)に譲位しています。その際、「王子に十分な統治経験を積ませるため、早期の譲位を決断した」と語っています。それから5年後(2011年)の10月、平民出身のジッフン・ベマと結婚し、翌月、お揃いで日本を訪問して大歓迎を受けたこともあります。
このブータン王国は、GNH(国民の総幸福量)が世界で最も高いとみられ、その幸せ感は「国王が素晴らしい」からだといわれているようです。もちろん、急速な近代化に伴う難しい問題もかかえているとみられますが、前国王の決断により誕生した若い新国王のもとで、独自の国作りが進められています。
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